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誘う涙が、
07/06 (Sun) 18:37|
さわさわと揺れる草木。
まるで歌うように奏でられる音たちに、菫はすぅと目を細めた。
引き締めていた口元を緩め、自嘲気味に微笑む。

「・・平和、だね。」

菫はゆっくりと膝を折り、その場にしゃがみこんだ。
ちょうど目の前には、誰かの墓と思わしき石が立っている。
名前は彫られていない。
小高い丘の上に立ったそれの前で、菫は両手を合わせた。
どれくらい時が過ぎただろう。
閉じていた目を静かに開く。
大きな丸い紫色の瞳は、どこか憂いを帯びていた。

「あの時、・・もっと早く気付くべきだったのかな。」

そうしたらこんな事には
貴方が居ない時間を生きる事には
ならなかったかもしれないね。

消え入りそうな声で呟く。
もちろん、その声に応じる者は居ない。
菫の脳裏に、その人の笑顔が浮かんだ。
もう二度とその人の姿を見ることもできないし、
もう二度とその人の声を聞くこともできない。
そう思うと、菫の意思と関係なく目の奥が熱くなった。
菫は固く瞳を閉じて、ぶんぶんと首を振った。

感傷に浸るために、ここに来たわけではない。
無理矢理に笑顔を作ると、菫は自分の近況を語り始めた。
学園のこと、能力者のこと、最近の行事のこと。
自分は今、物凄く幸せだということ。
全て話し終えた菫は、どこか満足そうに微笑んだ。
そしてふと、墓石に手をかざす。

「・・・・・大事な人がね、・・増えたんだよ。」

貴方以外に大切なものなんて、なかったあたしが。

「護りたい人だって、たくさん、居るの。」

貴方だけを護れればそれで良いと思っていたあたしが。

「・・貴方が教えてくれたんだよ?」

大切な人を失う悲しみ。
誰かを護ろうと思う強い意志。
全部全部、あたし一人じゃ見つけられなかった。

熱い雫が、菫の頬を濡らす。
涙のせいで、墓がぼやけて見えた。

「ありがとう、・・」

静かに、俯く。
もう笑うことなんてできない。
どうしてあの時、その人を護れなかったのか。
悔しい気持ちと、情けない気持ちでいっぱいだった。



「・・・・ごめんね-・・」
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